パフィーと対バン「愛の説教小屋 FINAL」
奥田ファミリー頂上決戦~PUFFYフルバンド VS 奥田ぼっち参戦~
2016.12.22(木)@大阪・新歌舞伎座
オフィシャルライブレポート



デビュー20周年記念の対バンイベント「パフィーの愛の説教小屋」のファイナルを飾った「奥田ファミリー頂上決戦〜PUFFYフルバンド VS 奥田ぼっち参戦〜」。その決戦の場所となったのは同イベント初の大阪、新歌舞伎座。

開演時間を少し過ぎた頃、暗転した場内に雷鳴が轟き、不穏な気配が漂い始めて、怪しい影アナが…。
「ねえねえ、由美ちゃん、奥田民生って知ってる? "唇お化け"みたいな…」「あの、バンドやってる? ジュンスカ?」「ちげーよ、広島出身で…、カープゴリ押ししてる…言うなれば広島の大泉洋かな…」「わかった、ユニコーンでしょ? いい曲書くよね〜。私泣いたことある、「自転車泥棒」」「それ、(作曲者は)テッシーだから…」と、言いたい放題なやりとりで場内を爆笑させる。

そんなハチャメチャな紹介から、先攻の奥田民生が満場の拍手に迎えられ、ゆったりとした足取りでご登場。ヒッコリーのつなぎにハットというカジュアルな出で立ちで、舞台中央に置かれた椅子に座り、独りギターを手にのんびりと歌いだす。PUFFYに提供した「MOTHER」「マイカントリーロード」でスタートするという粋な選曲だ。



「いい曲ですね。あ、オレのか(笑)」と一人ボケツッコミをかましつつ、「あの人たち、ホントによくがんばってきたよね。こんなに長くやると思わなかった。感慨深い…」といった温かい言葉も添えて、ラフな雰囲気で進行していく。



中盤、ユニコーンのナンバーも2曲披露。まずは、ワークソング風の「ブルース」を歌い、「後から出てくるドラムの人(川西幸一)が作った曲。ツアーが終わったと思ったら、また会ってしまった…」とさりげなく口にしてみたり、「リクエストとかあります?」と観客に声を掛けたりしながら。この時期にピッタリな世界観の「雪が降る町」は歌い終わると、客席の方を向いて何度も「ありがとう」と言っていたのが印象的だ。その後、傑作「The STANDARD」、みんなのクラップ&シンガロングが広がった名曲「さすらい」ではひと際大きな拍手と歓声に包まれた。無骨で味がある痛快な民生節はやはり圧倒的で、何にも増して心に沁みていく。

ラストは、「風は西から」を熱くポジティブに歌って、「ありがとう〜、メリークリスマス! 良いお年を〜」と明るく締められたのだった。そして、舞台の下手で前に出てきたかと思うと、いきなり歌舞伎風の舞台装置で奈落に消えるという遊び心ある演出で沸かせた。



後攻のPUFFYは、一転してSEのHI-STANDARD「Can't Help Falling In Love」と共に大迫力のバンドセットで登場! ボーダー柄のペアルックを着たふたりがアグレッシヴに煽って、のっけから「ジェット警察」「モグラライク」とアッパーかつ重厚なロックサウンドでたたみ掛けていく。

最初のMCで、新歌舞伎座の場内を眺めながら「素敵なところですね。提灯もあって…」と大貫。<T.M.Revolution>、<でんぱ組.inc>、さらには、<大貫亜美 vs 吉村由美>というこれまでの大胆な対戦を振り返って、「今日は説教をいっぱいやっていこう。"愛のディスり小屋"にする?」と吉村もやる気満々だ。

「21年前、初めてふたりの声を録音した曲」という「とくするからだ」、次に「海へと」とを続け、前半のハイライトとなったのはPUFFYの鮮烈なデビュー曲「アジアの純真」。ふたりがソロパートを交互に歌う華やかな見せ場があり、笑顔でデュエットして、「オーサカー!」と声を掛けるとオーディエンスもさらに大揺れでヒートアップ!



MCでは、「立て続けに"唇お化け"さん(=奥田民生)の曲を聴いてもらいました。どれもこれも名曲揃い」とおどけながらも恐れ入りつつ、「もっとディスっていこー!」と声を上げ、「カラオケで3時間、「セクシャルバイオレット No.1」を何回も聞かされ、体調を崩した」とか、「紅白出場の報告をけっこうな長文で送ったらメールの返事が"ハーイ!"のたった3文字だけだった」と、しばし奥田の素顔を明かす暴露トークが続く…。「でも、いい曲書くよね〜」「だめだ、ホメてばかりになっちゃう」と、なかなか本来の"説教"とはならない様子。

後半に入ると、「久々にやります」という「青い涙」をスタンドマイクでしとやかに歌い、「サーキットの娘」では明るいタッチで場内を揺らしていく。

途中、フルバンドのメンバー紹介では、ドラムの川西にも奥田のディスを促すが、「ホントは割とやさしい」(川西)「やさしさを見せないやさしさ…。計算だよね〜」(大貫&吉村)と、ここでも説教とはならず…。



終盤は、爽快なギターチューン「オリエンタル・ダイヤモンド」、イントロから飛ばしていったユニコーンの「働く男」が投下されて大盛り上がり!さらに、軽快なクラップから始まった「渚にまつわるエトセトラ」ではふたりが花道に出て煽り、観客も嬉しそうにシンガロングする光景が広がった。

そして、「なかなかこの季節に歌うことはない貴重な曲」と、クリスマスソングの「R.G.W.」を会場のみんなにプレゼントして本編は賑やかに終了。

アンコールでは、この日のために作られた限定品のキャップを被って登場。「みなさんのおかげで20周年を駆け抜けてこれました」と感謝と安堵の気持ちを伝え、「1曲(青い涙)を除いて、奥田さんの曲で構成しました」「ディスりようがない名曲ばかり」と、説教どころか改めて恐れ入るばかりの大貫と吉村。そして、「20年間支えていただいて感謝感謝です」とファンのみんなにお礼を述べて、「この人がいなかったら、始まらなかった」と、奥田民生を呼び込んで3人の豪華共演が実現した。



ここぞとばかりに、フリートークでふたりが新曲を要求すると、「オレが作ってないのにオマエらにやれるか!」と一喝される場面も。その後は、<奥田ファミリー>の文字が刺繍されたキャップをネタにするなど、和やかな会話が展開。「いつもありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」と、結局、最後の最後まで大した説教には至らずだったが、相手が奥田民生ならば誰もが納得だろう。

そして、フィナーレはPUFFYにしか体現できない無敵のナンバー「これが私の生きる道」。大貫と吉村のハープが軽やかに響き、奥田が高らかに歌い、3人でハモる歓喜の瞬間がそこに。デビュー20周年記念に相応しい超プレミアムな光景が脳裏にしっかりと焼き付けられた。



…ちなみに、幕が下りた後、場内に流れていた曲がユニコーンの「自転車泥棒」だったことも、そっと付け加えておきたい。